カルテの書き方
研修医になってはじめに戸惑うのがカルテの書き方。学生時代と違って責任がついてくるので、誰が見ても分かりやすく不備のないものを書きたいよね。今回はいざカルテを書く!となった時に困らないようカルテの書き方についてまとめてみた。
4月からいよいよ初期研修が始まるわけだけど、ペチーノはな、な、なんと......
循環器内科スタート!!!
Gekimu(激務)とRifujin(理不尽)に揉み揉みされること間違いなし。俺がモミモミしたいのはそういうのじゃなくて.....おっと話が逸れるとこだった。
と、いうことで今回はいざカルテを書く!となった時に困らないようカルテの書き方についてまとめてみた。
よく聞く最も基本の型はSOAP。ソープではなくSOAP。S(主観的情報)、O(客観的情報)、A(アセスメント)、P(プラン)と、それぞれ大枠は捉えているがそれぞれの区分やAとPをどう書き分けるかが難しいポイント。今回は、
「どこに、何を、どのように」
書くのか、わかりにくいものには例もつけながら明確にしていく。
・S(Subjective data)
Sはあくまで客観的データによるものを記載する。ここでいう客観的データとは
・患者自身
・患者の家族
・前医からの情報(手紙、カルテ)
など間接的に得られた情報を指す。雰囲気で主観を織り交ぜないように。これらの情報から以下のようなフレーム構成を立てていく。
1. 導入→年齢と性別、背景、主訴の4つより全体像を要約
例)高血圧で通院している31歳男性の、急激に増悪する左季肋部痛による受診。
2. 主訴→患者の言葉を医学用語に置き換えて書くことでクリアになる。
例)先生、左のおなかの上が痛いです→左季肋部痛
3. 受診理由→今回の診療の目的を明記する。患者側と問題意識の相違がある場合などは特に重要。
例)左季肋部痛の迅速な原因精査、初期対応
4. 現病歴→⚫︎時間経過・⚫︎症状解析(診断のために重要)・⚫︎ROS・⚫︎患者の解釈、希望に注意しながら順に記載する。
例)⚫︎三日前の午後より左季肋部痛が出現。来院1日前には食事も食べられないほど疼痛が悪化。一日中家で安静にしていたが、来院当日未明に痛みで何度も目を覚ますほどさらに痛みが悪化したため、救急外来を受診した。⚫︎痛みの性状は殴られるような重い痛みで、安静にすると軽快するが体を動かすと悪化する。来院当日未明には今までに経験したことのないような痛みだった。痛みは左季肋部から左背部に広がっているように感じる。
⚫︎息切れ(−),痰・咳(−),冷汗(+),嘔気(+),嘔吐(−)
⚫︎初めて経験する痛みで今まで大きな病気をしたことがないので非常に不安だ。きちんと精査をして原因を突き止めてほしい。
5. 併存歴→今も活動性のある疾患について。病状や治療の概要、かかりつけ医を記載。この部分はプロブレムリストを作成する際も参照することとなる。
6. 既往歴→過去に治癒した疾患について。発症時期と治癒時期、後遺症がある場合はそれも記載。手術歴、輸血歴、アレルギー歴、妊娠・出産歴なども忘れずに書く。
7. 治療内容→併存歴や既往歴と独立して記載することで医原性の問題の検討などがしやすくなる。内服薬は用法・用量を明記し、サプリメントや市販薬の服用についても記載する。
例)【内服薬】アムロジピン5mg 1× 市販薬の使用はなし。サプリメントは⚪︎⚪︎食品のにんにく卵黄を1日一粒。
8. 家族歴→この項目にも同居などしているキーパーソンも記載することで問題把握や介入に活かせる。
例)妻と子供と同居。父と兄が高血圧あり。祖父が心筋梗塞の既往あり。
9. 生活歴→嗜好品、生活習慣、排泄状況、社会歴(職業)を記載。
・O(Objective data)
この項は現時点で医師自身による「直接観察による所見」を書く。いわゆる身体所見と検査所見ってやつですね。
1. 身体所見
全身状態の概要と⚫︎ABCの評価→⚫︎バイタルサイン→⚫︎全身の所見という順で書くと国試の問題のような読みやすい所見が出来上がる。
例)⚫︎中肉中背。意識ははっきりしており会話もできるが痛みのため起立、歩行が不可能。苦悶用表情でシャツが汗ばんでいる。⚫︎JCS0・GCS15, BP98/54, PR101, RR28, SpO2 94%(Room air), BT38.9℃。
⚫︎頭頸部:結膜蒼白(+), 横染(−)。頸静脈圧7cmH2O。
胸部:心音整, S1→, S2→, S3(−), S4(−), 心雑音(−)。呼吸音正常, 肺ラ音(−)。
腹部:やや膨隆・板状硬, 左季肋部圧痛(+), 左季肋部打診痛(+), 拍動性腫瘤(−), 血管雑音(−)。
四肢:末梢冷感(−), 浮腫(−), 末梢動脈触知良好。
2. 検査所見
・検体検査:尿→血算・生化・凝固→血ガス→染色・培養
・生理検査:ECG、エコー、スパイロメトリー
・画像検査:単純Xp、CT
など項目を分けてパターン化することで書きもらしが少なくなる。
・A(Assessment)
このAの項目は研修医にとって1つの難関と言われてるよね。ここはただ情報を記載するんじゃなくて、S・Oをもとに自分が考えた"意見"を反映させるところ。プロブレムが診療の最中に追加・変更になる時の書き方、Pとの違いなど、かゆいくて手が届きにくいところにもスポットを当てようじゃないか。
1. プロブレムリスト
・「精査や介入をする必要がある」ものを列挙していく。逆に、既往歴や併存症があっても介入の必要のないものについてはSの既往症・併存症歴の欄に記載する。
・列挙する順番は「重要度順」を基本として、その他種々の問題については医学的問題→心理的問題→社会的問題の順に書く。
・可能であればSOAPとは独立した"プロブレムリスト欄"をカルテ上部に作ることでいつでも患者の問題を把握しながらカルテの記載ができ効率的。
・プロブレム名をつけるときは⚫︎「鑑別診断を考えやすい名称」に⚫︎「形容詞」をつける。
※⚫︎ 例)胸がつかまれるような感じ→胸痛 なんとなくだるい→倦怠感、易疲労感 など
※⚫︎ 急性・慢性・単・多・大・炎症性・非炎症性などつけると鑑別に役立つ
・診療を進めるうちにプロブレムが具体的になった場合プロブレム名をそのままにせず深化させてゆく。
例)#1. 腹膜刺激徴候を伴う左季肋部痛→急性膵炎
2. プロブレムの詳細記述
それぞれのプロブレムについて Brief Summary→根拠と鑑別診断→方針 の順で書いていく。
2-1. Brief Summary
プロブレムの全体像を1文でまとめる。プレゼン時にも使えるようにプロブレムの概要やなぜそのプロブレムを選んだのか分かるように。
例)#1. 腹膜刺激徴候を伴う左季肋部痛→急性膵炎
高血圧で治療中の患者の、冷汗と嘔気を伴い急激に増悪する左肋部痛。
2-2. 根拠と鑑別診断
まず初めに鑑別診断名を書き、その後にその根拠となるようなS・Oでの所見を書く。根拠を書くときは∵(なぜならば。の記号)を使うと便利。診断未確定の状態ならば鑑別診断をさらに3つは挙げ、それぞれにS/O(Suspect of : 可能性が高い)、R/O(Rule out : 可能性は低いが緊急のものを除外したい)の2段階の評定をつける。
2-3. 方針
上記に挙げた鑑別診断や根拠を踏まえ、短期と長期の大まかな方針を示す。これはPと混同しがちだが、Pが具体的な実行計画なのに対し、Aはあくまで計画の方向性を提示する(主治医としての意見や提案など)。
・P(Plan)
Assesmentの項でも述べたように、Pには実際の具体的な「実行計画」を記載していく。入院時などには膨大な計画を記述することになるため、単純明快な記述を心がけ、誰もが分かりやすく実行できるものにする。また、診断プラン(Dx)、治療プラン(Px)、説明・教育プラン(Ex)の三部構成とすると見落としを少なくなる。
いかがでしたでしょうか。自分の知識がないのは「お前アホやな〜」で済ませられるけど、カルテは皆が共有するものだからね。「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」の精神で突っ込むと間違いなく大変なことになるやろ!今回の記事のコピペをポッケに潜り込ませてペチーノは循環器頑張ろうと思う。
なお、今回は医学書院:「型」が身につくカルテの書き方という本を参考にしました。また研修に役立つことを「先生あのね」しながらブログを書いていこーと思う。
それでは皆さんも4月から健闘を!